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国内リリース
学部新入生を対象とした「発達特性」と「精神的健康度」に関する調査を実施
2024.11.08  14:01

大学入学早期からの支援体制充実の必要性

2024年11月8日
岐阜大学

学部新入生を対象とした「発達特性」と「精神的健康度」に関する調査を実施-大学入学早期からの支援体制充実の必要性-

 

研究のポイント
・岐阜大学の学部新入生全員(日本人)を対象として、入学1か月以内の時期に発達特性および精神的健康度に関する調査を実施しました。
・調査の結果、発達特性を有すると推察される学生の割合は8.58%でした。また、発達特性を有すると推察される学生では、それ以外の学生に比べて、抑うつ、不安、ストレスなどの精神的健康度リスクが高いことが分かりました。
・発達特性を有する学生には、大学入学早期から大学支援部門が介入して、修学・生活支援を通じ、精神的負担軽減に努める必要があると示唆されました。

研究概要
 岐阜大学保健管理センターの足立美穂助教、山本眞由美教授らのグループは、岐阜大学の学部新入生全員を対象として、発達特性※1を有すると推察される学生の頻度と精神的健康度の調査を実施しました。調査は大学入学後1か月以内に実施し、発達特性は自閉症スペクトラム指数(AQ)と成人期ADHD検査(A-ADHD)を用いて推察し、精神的健康度はCCAPS日本語版※2(Counseling Center Assessment of Psychological Symptoms Japanese; 大学生の精神的健康度指標で、点数が高いほど精神的健康度リスクが高い)を用いて調査しました。分析対象711人のうち、発達特性があると推察された人数は61人(8.58%)でした。これらの学生は、それ以外の学生に比べてCCAPSの7つの項目(抑うつ、全般性不安、社会不安、学業ストレス、食行動、敵意、家族ストレス)で有意に点数が高く、精神的健康度リスクが高いことが分かりました。本研究によって、発達特性があると推察される学生には、大学入学早期から支援の必要性を確認し、必要に応じて修学・生活支援を提供して精神的負担軽減に努める必要があると示唆されました。
 本研究成果は、日本時間2024年10月16日にJournal of Autism and Developmental Disorders誌 (Springer Nature)のオンライン版で発表しました。

研究背景
 近年、発達特性のある人たちへの理解が広がっています。ひとりひとりの優秀な能力を発揮するために、高等教育現場でも修学支援や合理的配慮を提供する体制が整備されてきました。しかし、日本の大学において、発達特性を有する学生の頻度や、支援の必要性についての詳細は未だ明らになっていません。

研究成果
 発達特性を有すると推察される学生の頻度(8%以上)は少なくなく、高校から大学へ進学する際の環境変化時に既に精神的健康度リスクが高いことが明らかになりました。高等教育現場においては、入学時から、発達特性を有する学生の支援や合理的配慮の必要性を把握し、早期に介入が開始されるべきであると示されました。

今後の展開
 大学生活の進行とともに精神的健康度はどう変化するか経過を追っていき、さらに詳しく支援の必要性を分析することで、具体的な支援策の開発や施策の改善につながることが期待されます。

用語解説
※1 発達特性:
自閉症スペクトラムや注意欠如・多動症(ADHD)といった特徴を持つ人々の認知や行動の傾向を指す。これらの特性を持つ方は、周りの環境に対する感じ方や考え方が個性的で、社会的なやりとりや集中力において独特な傾向を示すことが多い。例えば、強い集中力を持ちながらも他人とのやりとりに難しさを感じたり、注意が散漫になりやすい一方で新しい視点を生み出す創造力に富んでいるなど、様々な性質を含む広い概念。
※2 Counseling Center Assessment of Psychological Symptoms (CCAPS)-Japanese:
米国で開発された大学生の心理・精神症状の測定に特化した国際標準の心理指標。米国では750以上の大学で導入されている。日本語版は岐阜大学保健管理センターの堀田亮准教授が研究代表者となり開発した。

論文情報
雑誌名:Journal of Autism and Developmental Disorders
論文タイトル:Frequency and Mental Health Condition of Students with Developmental Disabilities Among First‑Year Japanese University Students: A Cross‑Sectional Survey
著者:Miho Adachi, Ryo Horita, Takao Miwa, Satoko Tajirika, Nanako Imamura, Daichi Watanabe, Takuma Ishihara, Taku Fukao, Hidenori Ohnishi, Mayumi Yamamoto
DOI: 10.1007/s10803-024-06515-y