MVP:岡慎之助 MIP:北口榛花 活躍満足度:早田ひな
産業能率大学スポーツマネジメント研究所(所長:中川直樹 情報マネジメント学部教授)は、2024パリ五輪の閉幕直後に、日本代表選手に関するMVP(最優秀選手)・MIP(最も印象に残った選手)の投票、種目別の観戦率・満足度、大会運営・日本チームのマネジメントに関する意識調査、次回2028ロス五輪大会への期待などについて、開幕前に行った1万人アンケートの追跡調査として、全国の1,000人に対して実施しました。
1.日本代表選手に関する調査 (MVP・MIPは各1選手のみ。活躍満足度は複数選手への投票可)
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2.種目の観戦に関する調査
(観戦率はダイジェスト等を含む。LIVE観戦率・観戦満足率は観戦者分母、観戦率5%以上を有効として掲載)
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3.意識調査
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4.ロス五輪の注目競技調査 (特に楽しみにしている競技を5つまで挙げてもらった結果)
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1. 日本代表選手に関する調査
日本代表選手に関する調査は、男子232選手、女子198選手の計430選手を分析対象として実施しました。MVP(最優秀選手)・MIP(最も印象に残った選手)に関する調査は、それぞれ1選手のみを選んで投票する形式とし、理由を合わせて尋ねました。もう一方の活躍満足度に関する調査は、複数回答可(該当する選手全員)とし、①知っている選手を選択→②競技を視聴・観戦した選手を選択→③競技での活躍に満足している選手を選択という3プロセスで実施しました。なお「視聴・観戦」には、録画再生・ニュースやダイジェスト・テレビ以外の視聴手段を含みます。以下、調査結果を「MVP」「MIP」「活躍満足度」「知名度向上」の4つに分けて掲載します。メダルを獲得した選手には、参考としてメダル情報を付けて掲載しました。
1-1.MVP(10票以上獲得した選手)
最多得票は、日本代表最多の4個のメダル(金メダル3、銅メダル1)を獲得した体操男子の岡慎之助選手でした。主にメダリストが名を連ね、基本的には実績重視の傾向が読み取れます。非メダリストとしては団体種目の中心選手だった、バレーボール男子のキャプテン石川祐希選手、バスケットボール男子のポイントガード河村勇輝選手が票を集めました。
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1-2.MIP(10票以上獲得した選手)
最多得票は、陸上競技フィールド種目における日本女子初の金メダルに輝いた北口榛花選手でした。MVPでは10票以上獲得した選手が11名に絞られましたが、MIPでは16名に票が分散する結果となりました。MVPとの比較では、阿部詩選手、森秋彩選手、吉沢恋選手、小久保玲央ブライアン選手、サニブラウン・アブデル・ハキーム選手が加わりました。
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1-3.活躍満足度(100票以上獲得した選手)
活躍満足度調査は、複数回答可(該当する選手全員)としている点がMVP・MIP調査との大きな違いです。
最も票を集めたのは卓球女子シングルスで銅メダル、女子団体で銀メダルを獲得した早田ひな選手でした。団体戦でともに活躍した張本美和選手、平野美宇選手も上位にランクインしました。体操も男子団体で岡慎之助選手とともに2大会ぶりの金メダル奪還に貢献した、最終演者の橋本大輝選手と第一演者の萱和磨の名前も見えます。
メダル獲得はならなかったものの、バレーボール男子において石川選手とともに活躍した西田有志選手と髙橋藍選手、キャプテンとしてバレーボール女子チームをけん引してきた古賀紗理那選手、日本選手初となる五輪100メートルでの9秒台をたたき出したサニブラウン選手などの活躍も高く評価されていることがうかがえます。
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1-4.知名度向上(上位10選手)
質問①の選手認知率を「知名度」と定義し、事前調査の同質問とのポイント差を集計しました。上位10選手は事後調査における知名度が全員15%を超えていますが、事前調査においてその基準を満たしていた選手は、サニブラウン選手と北口選手の2名だけでした。サニブラウン選手以外は全員がメダリストであり、特に金メダルを3個獲得した岡選手が圧倒的な1位となっていることから、2024パリ五輪での活躍とりわけメダル獲得が知名度アップの決め手になっていることが実証されました。
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2. 種目・式典の観戦・視聴に関する調査
2024パリ五輪では32競技329種目が実施されました。本調査では、競技ごとに分類した329種目に開会式・閉会式を加えた計331項目を提示し、➊視聴・観戦した種目・式典をすべて選択してもらいました。その上で、➊→➋リアルタイムで視聴した種目・式典に限定、および➊→❸視聴して良かった種目・式典を選択してもらう調査を実施しました。
上記の調査結果を「視聴・観戦率」「LIVE観戦率」「観戦満足率」の順で報告します。なお「視聴・観戦」には、録画再生・ニュースやダイジェスト・テレビ以外の視聴手段を含みます。日本代表がメダルを獲得した種目には、参考としてメダル情報を付けて掲載しました。
2-1.視聴・観戦率(上位15件)
質問➊の該当率を「視聴・観戦率」と定義(式典を含まなければ「観戦率」という呼称も可能)し、その比率をランキング化しました。予選やリーグ戦を行う種目については和集合となるため値が大きくなります。同様に、式典や日本代表がメダルを獲得した種目についてもニュースやハイライト番組で繰り返し放送されるため、値が大きくなる傾向にはあります。
興味深いのは性差が顕著な点でした。男性では最も観戦率が高い(28.8%)種目である「サッカー男子」が、女性では36位(11.8%)と2分の1以下でした。同じく男性6位(24.1%)の「ゴルフ男子」も、女性では23位(16.2%)という結果でした。逆に女性の方が男性よりも観戦率が高い種目としてはスケートボードが挙げられます。女性では5位(26.0%)の「男子ストリート」が男性では21位(16.2%)、8位(24.7%)の「女子ストリート」が男性では22位(16.0%)となりました。それらの結果を確認できるように下表では上位15件まで掲載しました。
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2-2.LIVE観戦率(上位10件)
前節「視聴・観戦率」の留意点として、繰り返し視聴がその比率を押し上げる点について触れました。本節では、リアルタイムでの観戦率が高い種目の特徴を掴むべく、「LIVE観戦率」のランキングを掲載します。この指標は、質問➊(視聴・観戦)の該当者に占める質問➋(リアルタイムで視聴)該当者の割合です。なお視聴・観戦率の閾値を5%以上に設定しました。LIVE観戦率が高い種目として注目されるのは1位と3位にランクインしている「マラソン」です。「オリンピックの華」とも呼ばれ、大会最終盤に実施されて閉会式内で表彰が行われることも恒例となっている種目であり(通常は男子が最終日ですが、男女平等を謳うパリ五輪では女子を最終日に設定)、リアルタイムでの観戦率が高いことが実証されました。
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2-3.観戦満足率(上位10件)
本章の最後に掲載するのは「
観戦満足率」です。この指標は、➊(視聴・観戦)の該当者に占める❸(視聴して良かった)該当者の割合です。前節同様に視聴・観戦率のしきい値は5%以上に設定しましたが、前節とは対照的に日本代表がメダルを獲得した種目が多くを占め、例外は「バレーボール男子」と「陸上男子マラソン」のみです。特に「金メダル」獲得種目が半数以上であることから、観戦満足率には「競技の結果」が大きな影響を与えていることが推察されます。
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3. 意識調査
2024パリ五輪を社会調査的な視点から総括すべく、「はい」と「いいえ」を選択肢とする質問を、「五輪の意義と大会運営に関する調査」と「日本代表の活躍とコミュニケーションに関する調査」の2つのテーマに分けて、それぞれ5問ずつ尋ねました。なお、前者については「大会運営の良かった点と改善点」、後者については「日本チームのマネジメントにおいて評価できる点と今後の課題」についても自由記述で尋ねました。以下にそれらの結果概要を述べます。
3-1.五輪の意義と大会運営に関する調査
「はい」の回答率を肯定率として、関連する5つの質問の肯定率を属性ごとに集計し、全体としての肯定率の高い順に並べた結果が上方の表になります。各セルの網掛けは、相対的に肯定率が高いほど暖色、低いほど寒色としています。
パリ五輪に限定せず一般的な五輪に対しては、すべての層で「素晴らしい祭典だと思う」の肯定率が過半数にのぼり、女性と60代では約7割にもおよびました。しかしながら、2024パリ五輪に限定すると、各層でおおむね10ポイントずつ肯定率が低下していることがわかります。「夢中になれる瞬間があった」については過半数となっているものの、「世界平和の祈念」や「パリやフランスへの関心度アップ」にはあまり結びつかなかったことが定量的な結果として示されています。
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その背景を定性的な自由記述で探ったものが下方の表になります。パリ五輪の良かった点として、「式典の豪華さ」「有観客での無事開催」「美しい景観」「歴史的建造物との融合」「コスト削減」「SDGsへの配慮」「交流の促進」が挙がる一方で、「不公平性・誤審」「選手村の環境」「セーヌ川の水質」「商業主義」「治安の悪さ」「ジェンダー問題」などへの不満の声も上がっていました。とりわけ170件以上記入された「不公平性・誤審」への批判は、競技の結果にも直結する重大問題のため、パリ五輪を一概に成功と呼べない第一の原因だと考えられます。
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3-2.日本代表の活躍とコミュニケーションに関する調査
前節同様に、関連する5つの質問の肯定率を属性ごとに集計し、全体としての肯定率の高い順に並べ、相対的に肯定率が高いほど暖色、低いほど寒色に網掛けしたのが上方の表です。
2024パリ五輪における「日本代表の活躍」については、海外開催の五輪として過去最高となる45個のメダル(金20、銀12、銅13)を獲得したこともあり、全体で77.0%もの人々が満足を示しました。60代に至っては約90%の高率です。他の質問項目についてはいずれも肯定率は半数を割り込みましたが、属性によって差異が見られました。相対的に「いつもよりも会話のネタが増えた」は女性において高く(47.1%)、男性(38.3%)との間に約9ポイントの差がありました。他方、世代差が顕著だったのは「ネット上での他人の意見・感想のチェック」であり、20代(42.3%)と60代(17.2%)との間には、実に25ポイント以上もの開きがありました。そこまでの大きな差ではないものの、「TVer利用」と「リアルタイム視聴に適した時差」についても20代の値が高い結果が得られました。ただし、これらの2変数は、30代で落ち込み、40代で再び上がるなど非線形の結果のため、年齢が決定要因とは必ずしも言い切れません。
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日本代表の活躍については肯定的な意見が多いですが、「評価できる点」だけでなく「今後の課題」についても掘り下げを行いました。前者に関しては、「選手の努力」はもちろんのことながら、「コンディションのサポート」や「選考基準の明確化」、「有能な指導者の招聘」といったマネジメント面を評価する声も多く寄せられました。後者に関しても、前節とも関連する「誤審への毅然とした抗議」の必要性、「競泳の復活」やメダル獲得まであと一歩叶わなかった「団体競技の強化」、次章にも関連する「五輪後の注目度維持」などの建設的な意見が数多く寄せられていました。
4. 競技の関心・注目に関する調査
競技の関心・注目に関する調査は2つ実施しました。一つ目は2024パリ五輪の実施競技に関して、事前調査と同じ44競技分類※を用意した上で、事前調査同様に「関心のある競技をすべて」を選択してもらう調査です。該当率は「関心度」と定義します。そして、もう一つの調査は、次の夏季オリンピック競技大会である2028ロス五輪に関してです。実施予定の35競技を提示し、「特に注目している競技を5つまで」選択してもらい、合わせて理由を記述してもらいました。
4-1.パリ五輪前後における関心度の変化
開幕前にもまったく同じ調査を実施しているため、両者のポイント差を「関心度変化」として集計しました。五輪という特別な期間においては注目を集めるものの、平時もその注目を維持することが難しい点は再三指摘されてきた課題であり、前章においても「五輪後の注目度維持」として複数の回答者が挙げていましたが、その傾向が顕著に現れました。
※ 陸上競技は「トラック種目」「フィールド(跳躍)」「フィールド(投てき)」「マラソン・競歩」「男子10種・女子7種」に、水泳は「競泳」「飛び込み」「水球」「アーティスティックスイミング」「マラソンスイミング」にそれぞれ5分割しました。また体操競技から「新体操」と「トランポリン」、バレーボールから「ビーチバレーボール」、バスケットボールから「3x3バスケットボール」をそれぞれ独立させました。競技名について、「ローイング」は「ボート競技」、「セーリング」は「ヨット競技」、「ブレイキン」は「ブレイクダンス」という表現に変更しています。
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44競技分類中、関心度が上がった競技はわずか10競技でした。上位はいずれもメダルを獲得した競技であることから、メダル獲得が競技関心度をアップさせることが実証されていますが、それ以上に全体的な関心度のダウンが目を引きます。特に最下位の「競泳」は、過去の大会では金メダルをはじめ複数メダル獲得が当然視されていただけに、今回の銀メダル1個という結果は期待の裏返しとしての失望につながったと考えられます。
開幕前関心率が2桁以上の競技が軒並み下位に沈む中で、「バドミントン」「ゴルフ」「ブレイクダンス」の低下が大きくないのもメダル獲得の効果と考えられます。また、「バスケットボール」はW杯2023、「バレーボール」はW杯2023と本年のネーションズリーグ2024によって、パリ五輪開幕に関心度のピークを持って来たという見方や、今なお2桁以上の高い関心度を維持しているとの見方もできますが、全般的に「五輪後の注目度維持」の課題は共通しているといえるでしょう。
4-2.ロス五輪の注目競技
2028ロス五輪の実施競技として現時点で確定している全35競技を選択肢として提示し、「特に注目している競技を5つまで」選択してもらった該当率を「注目度」とし定義し、全体の注目度の高い順(総合順位)で掲載しました。なお、2024パリ五輪の32競技との比較においてリストから外した競技は「ブレイキン」と「ボクシング」の2競技、追加した競技は「クリケット」「野球・ソフトボール」「ラクロス」「スカッシュ」「フラッグフットボール」の5競技です。
2024パリ五輪の開幕前調査では3位だった「柔道」が、男女から平均的に注目度が高く1位に躍り出ました。男性では2020東京五輪以来の復活となる「野球・ソフトボール」が圧倒的な1位、女性回答では僅差で1位「体操」、2位「バレーボール」となりました。「野球・ソフトボール」を除き、追加競技の注目度は現時点では高くありませんが、2020東京五輪における「空手」「スケートボード」「スポーツクライミング」「サーフィン」、2024パリ五輪における「ブレイキン」は大会時には大きな注目を集めました。今後の4年間でどこまで注目度を伸ばすか、本研究所では継続的に調査していきます。
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5. 日本代表選手以外で印象に残った人物に関する調査
本調査では、日本代表選手以外で印象に残った人物に関する自由記述調査も行いました。国内外選手団に含まれる「日本代表指導者・外国チームの代表選手」と、それ以外の「元選手・式典出席者・アナウンサー」に分けて、2件以上の人物を理由とともに下表にまとめました。なお、ニックネームや表記ゆれは修正の上、正式名称に統合して集計しています。
5-1.日本代表指導者・外国チームの代表選手
1位は「無課金おじさん」として一躍時の人となった射撃混合エアピストル銀メダリストのトルコ代表ユスフ・ディケッチ選手、2位は柔道において圧倒的な存在感を見せたフランス代表のテディ・リネール選手、3位は7年間にわたりバレーボール男子日本代表を指揮し惜しまれつつ退任したフィリップ・ブラン監督でした。
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5-2.元選手・式典出演者・アナウンサー
1位は、閉会式において2028ロス五輪への架け橋として登場したハリウッド俳優のトム・クルーズさん、2位は注目競技「卓球」の解説やインタビュアーとして好評を博した石川佳純さん、3位は熱いリポートに定評があり今大会では体調不良も心配された松岡修造さんの名前が挙がりました。
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【調査概要】
調査方法:インターネットリサーチ
調査期間:2024年8月14日~16日の3日間
調査対象:20歳から69歳までの男女1,000人(地域・性年代構成比は、総務省統計局最新推計比率に準拠)
調査監修:小野田哲弥(産業能率大学スポーツマネジメント研究所研究員/情報マネジメント学部教授)
調査協力:阿部凌・岸下佳祐・小永吉祥太・長谷川也紗・松浦駆・宮野夏実(小野田ゼミ)
【回答者属性】 (N=1,000)
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【産業能率大学】
■ホームページ:
https://www.sanno.ac.jp/